バンドワゴン効果bandwagon effect

有斐閣の「社会学小辞典」によれば、バンドワゴン効果bandwagon effectとは、ある意見が大多数の人に支持されているということだけで、その意見を受け入れる傾向があることをいいます。「勝ち馬にのる」「長いものには巻かれる」的な発想のもので、私は学部1年くらいのとき、投票行動の文脈でこれを習った記憶があります(ちなみにバンドワゴン効果ググると、現在ではマーケティング用語として紹介されることが多いようです)。匿名性のない選挙(小さな村の選挙などでしょうか?)では、論功行賞への期待や報復への恐れからこのような効果が働くということです。

 「ほんとかよ」

と思いました。確かに企業内での投票や人口が数十人の村長選挙くらいのレベルであればこのようなこともありうるかもしれませんが、実際問題として現代日本において匿名性のない選挙などというものはおおよそ想像し難く、論功行賞への期待や報復への恐れなどを考慮しなければならない選挙というものがよくわかりません。それに私はどちらかというと「判官贔屓」したくなる傾向があり、アンダードッグ効果の方が、まだ納得できました。ただ、「バンドワゴン効果」であれ「アンダードッグ効果」であれ、生じた現象にただラベルを貼り付けただけで、マスメディアの効果、とりわけ選挙報道の効果の説明としては何の説得力も感じません。これらの効果が生じる可能性条件などを整理するような議論だと、少しは生産性のあるものにはなりそうな気もしますが。

ただ、この度の某選挙戦をぼけっと眺めていると、バンドワゴン効果というものも、たしかにありうるかもと思うようになりました。ようはこういうことです。

現在のところ選挙では【A】候補が有力のようだ。私としては【B】候補に当選して欲しいが、【C】候補が当選するよりは【A】候補が当選したほうがまだマシに思える。【B】候補の票は伸び悩んでいるようだ。だったら【A】候補に投票してしまおう。

飛び抜けて強い候補が不在で、横並び的な群雄割拠の状態のとき、上述したような投票行動は合理のように思います。ここでみなさんは【A】、【B】、【C】に誰を当てはめるでしょうか。政治的な信念や政策の考え方により、【B】、【C】には人によっていろんな候補が当てはまると思うのですが、【A】に入るのは相対的にニュートラルな政治的主張をしており、なおかつTVや新聞などの選挙報道で有力だと伝えられた【A】候補だけです。つまり、上述したような合理的と思える投票行動をする人を投票者のモデルと考えた場合、政治的信念や政策の考え方の差異によらず、【A】に投票する人が増えるように思えるのです。

実際のところ、このような投票行動もバンドワゴン効果と呼ぶようです。①「論功行賞への期待や報復への恐れなどを考慮する投票行動」も、②「上述したようなそれなりに合理的と思える投票行動」も、選挙戦において「現在有力」と報道された候補者に投票するという結果だけみれば、確かに選挙報道によるバンドワゴン効果なのでしょう。ただ、①と②は随分と異なる投票行動に思えるので、結果だけを捉えて同じ選挙報道による「ワンドワゴン効果」とラベルを貼るのは未だに納得がいきませんが。